フランス北東部、ヴォージュ山脈(Massif des Vosges)の南部に位置する Martinswand(マルタンスヴァント)。標高1,200m近い場所にあるこのクライミングエリアは、夏の暑い時期でも比較的快適に登ることができ、ストラスブール周辺のクライマーにとって人気の避暑地でもあります。
しかし、Martinswandの魅力は涼しさだけではありません。美しい山岳景観、花崗岩の岩肌、そしてヴォージュ山脈では貴重なマルチピッチクライミングが楽しめること。私にとってMartinswandは、何度訪れても新しい発見がある特別な岩場です。
歴史あるマルチピッチエリア Martinswand
Martinswandは1960年代からクライマーに登られてきた歴史ある岩場です。現在でもボルトは整備され、多くのクライマーが訪れるアルザス地方を代表するクライミングエリアのひとつになっています。特に魅力的なのが、ヴォージュ山脈では数少ないマルチピッチクライミングを楽しめること。ただし、その歴史の長さゆえに、多くのルートが複雑に絡み合っています。
隣り合ったルートが途中で交差していたり、同じ壁に複数のラインが存在したりするため、初めて訪れるクライマーにとってはルートファインディングが大きな課題になります。実際、私自身も何度も訪れていますが、毎回「どこを登るべきなのか?」と悩まされます😂それでも、この迷いながら登る感覚もMartinswandの魅力のひとつなのかもしれません。
久しぶりのMartinswandへ
2022年に続き、2023年6月も暑い日が続いていました。「久しぶりにMartinswandへ登りに行きたいな」そう思っていたところ、2週間ほど前に出会ったクライマーのLucileさんから連絡が。偶然にも、彼女たちとMartinswandへ行くことになりました。集合場所は少し意外にも、ストラスブール周辺ではなくコルマール駅前。「なぜコルマール?」と思いましたが、Lucileさんの友人も参加するとのことで、楽しみに向かいました。
初心者クライマーと挑戦するMartinswand
コルマール駅に到着すると、Lucileさんの姿はまだありませんでした。代わりに待っていたのは、今回初めて会うSarahさん。挨拶をして、おしゃべりをしながらLucileさんを待ちましたが……なかなか現れません😂
予定より少し遅れて出発。車内では笑い声が絶えず、楽しい会話が続きました。そして驚いたことがあります。Sarahさん、なんと今回が外岩クライミング2回目!初心者クライマーさんだったのです。正直、少し不安がありました。というのも、Martinswandは同じグレードでも他の岩場より難しく感じることが多く、特にルートファインディングや終了点の判断が難しいエリアだからです。それでも、せっかくの機会。みんなで挑戦することにしました。
予定していた時間よりもだいぶ遅れましたが、12:30pm過ぎに Martinswand に到着しました。驚いたことに駐車している車は思ったよりも少なかったです。通常は50台以上の車が駐車してあるのに、この日はたった20台ほどでした。「これは私たちにとってはまさに幸運の証だ」と、この時は思っていました……
Le passage clouté(6a+)mlead
この日の最初のルートは Le passage clouté(6a+)。結果から言うと、完全に Martinswand の洗礼を受けました😂下部では、キーとなるホールドがガタガタと動いたため、安全を考えて使用せずに登りました。その影響もあって、思った以上に難しく感じました。
そして問題は上部。「このまま直登してハングを越えるのか?」「それとも右側のスラブを登るのか?」迷いました。しかし、私は「きっと直登だろう」と判断。結果……激ムズでした😂OSトライではムーブが分からずテンション。体感では6c〜6c+くらいに感じました。
さらに問題だったのが、クイックドローの数。12本持って登りましたが、まったく足りません。「Martinswandは長いルートが多いとはいえ、ここまで足りなかったことは初めて」と思うほどでした。
後からトポを確認すると、なんと本来のルートは右側のスラブ。私が登ろうとしていた直登ラインは、別ルート Le Tichodrome en rit encore(7b+)でした🤦🏻♂️久しぶりのMartinswand、いきなりやられました。
La digestive(5c)FL
続いて La digestive(5c)。こちらは、クライミング仲間が終了点を見失ってしまったため、確認のために登りました。3人で来ていて本当に良かったです。実際に登ってみると、確かに終了点の位置は分かりづらい。アルザス地方の岩場では通常、終了点には2つのボルトが設置されていますが、このルートでは2つ目のボルトの位置が少し曖昧でした🤷🏻♂️初心者ルートなんだからもう少し混乱することの無いように終了点を設定するべきなのでは?と思うぐらいでした。加えて彼女は隣の L'inox(4C)も登っていたため、より困惑したみたいです。
失敗も含めて、それが外岩クライミング
この日は思ったほど多くのルートを登ることはできませんでした。しかし、私にとっては非常に印象に残る一日になりました。
今回改めて感じたのは、外岩クライミングでは「登る技術」だけではなく、
- ルートを読む力
- 終了点を判断する経験
- 岩場全体を理解する力
が重要だということ。
特にMartinswandのような歴史ある岩場では、単純にグレードだけを見ることはできません。初心者や初級者と一緒に登る場合は、より慎重な判断が必要だと感じました。
今回一番問題になったのは終了点の位置でした。明らかにシングルピッチとしてルートを登るには無理のあるルートを選んでしまったと思っています。ただ、具体的にどのように改善すべきだったのかは難しい問題です。トップロープで登りたい人の場合は、私がマネージできるので今回のような状況にはならなかったと思いますが、リードクライミングで未体験のルートに挑みたい初心者クライマーさんにとっては難しい状況です。しかしそれはクライマーの誰もが通る道なのかもしれませんね。
それでも、Martinswandの魅力が色あせることはありません。青空の下に広がるヴォージュ山脈の景色。花崗岩の美しい岩肌。そして、少し緊張しながら未知のラインへ挑むワクワク感。今回も「やっぱりMartinswandは特別な場所だ」と再確認する一日になりました。思い通りに登れなかったからこそ、次への挑戦が楽しみになります。また一緒に登れる日を楽しみにしています!
活動まとめ
メンバー: Lucile・Sarah
- La digestive (5c) FL
※ Martinswand Secteur Dについて:La pivel(5c)〜La digestive(5c)は、終了点の位置やロープの流れに注意が必要です。特にトップロープで利用する場合は、ロープの流れが悪くなる可能性があります。マルチピッチのスタートピッチ(L1)として利用する場合には大きな問題はありませんが、シングルピッチとして登る場合は十分注意してください。
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