前日に続き、この日も朝から雲ひとつない快晴。オルコ渓谷遠征2日目は、このエリアを代表する岩場セルジャン(Sergent)でマルチピッチクライミングに挑戦しました。
当初は人気ルート「Nautilus(ノーティラス、6a)」を登る予定でしたが、必要な装備が足りないことに現地で気づき、安全を優先して予定を変更。今回は初級者にも人気の「Via Yoghi(ヴィア・ヨギ、5c)」を選ぶことにしました。急な予定変更は少し悔しくもありましたが、こういう時こそ無理をしないのがマルチピッチの鉄則だと、改めて自分に言い聞かせました。
グレードだけを見ると比較的やさしいルートですが、全長は約450m、14ピッチという十分なスケールがあります。私にとって本格的なマルチピッチは、エクラン山塊で登った「Visite Obligatoire(ヴィジット・オブリガトワール)」以来、実に2年ぶり。久しぶりの長い一日に少し緊張しながらも、朝の澄んだ空気の中、岩場へ向かいました。
幸い、この日は取り付きに一番乗り。最終的には私たちを含めて3パーティーが同じルートを登ることになりましたが、大きな待ち時間もなく、自分たちのペースで快適に登ることができました。
ルート情報:Via Yoghi
当日の行動記録
登ってみての感想
オルコ渓谷らしさを気軽に味わえる一本
「Via Yoghi」は、オルコ渓谷を代表する本格的なクラックルートとは少し異なり、しっかりとボルトが整備されたスポーツクライミング寄りのマルチピッチです。途中には草が茂るピッチもありますが、ルート全体を通して安心感があり、初めてオルコ渓谷でマルチピッチに挑戦する人にもぴったりだと感じました。派手な核心が続くわけではない分、14ピッチという長さを純粋に「景色とプロセスを味わう時間」として楽しめたのが、このルートの一番の魅力だったように思います。
ハイライトはL12、太極図のようなクラック
そして最大の見どころは、終盤のL12。黒と白の岩が太極図のような模様を描く、美しいクラックが現れます。ここまでの11ピッチをじっくり登ってきたからこそ、このピッチの景色は一段と印象に残りました。オルコ渓谷らしいクラックの雰囲気を、スポーツクライミング寄りのルートの中で少しだけ味わえる、贅沢な一手でした。
思わぬロープトラブルも良い経験
今回のルートは、自分たちの実力からすると比較的余裕を持って登れる内容でした。しかし、ハイライトのL12を目前にして思わぬトラブルが発生。ロープが岩の隙間でスタックしてしまい、回収に約30分かかりました。後から振り返ると、ロープが絡みやすい場所だったので、もう少し慎重に流れを確認しておくべきでした。幸い大きな問題にはなりませんでしたが、マルチピッチではクライミングそのものだけでなく、ロープワークやロープマネジメントも同じくらい重要だということを、改めて実感させられる出来事でした。
登り終えた後の、ご褒美の時間
キャンプ場へ戻ると、まずはシャワーで汗を流します。そして冷えたビールとジェラートで乾杯。クライミング自体は激しい核心が続くようなルートではありませんでしたが、だからこそ景色を楽しみながら、のんびりと一日を過ごせたように思います。
キャンプサイトから見上げるセルジャンの岩壁。手元には開いたままのトポ。「あそこを登ったんだね。」そんなふうにルートを指差しながら一日を振り返る時間は、クライミングそのものと同じくらい贅沢なひとときでした。
オルコ渓谷は、派手な観光地ではありません。それでも、美しい森と岩壁に囲まれた静かな時間、そして歴史あるクライミング文化に触れられる、特別な場所です。きっと、またこの渓谷に戻ってくると思います。
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