前半の2日間で、長いアプローチという名のトレッキングに迷い、初めてのカランクの景色に圧倒されました。後半はこのエリアの「本質」とも言えるクライミングそのものと、プロヴァンス名物の強風ミストラルとの対峙が待っています。新しい仲間との出会い、粘って掴んだ一本、そして風に吹かれながらの最終日。後半戦の記録です。
5月8日 晴れ Morgiou と新しい仲間
この日から新しいメンバー Thomas くんが合流しました。彼はちょうど Lyon へ引っ越したばかりで、まだ住む場所も決まっていないという。軽い冗談のように「家がないから来ました」と笑いながら言っていたことが印象的な出会いでした。
この日に向かったのは Morgiou です。駐車場からのアクセスはシンプルで、左の道へ進めば Morgiou、右に進めば Sormiou に行けます。舗装された道路を歩けば海岸まで迷うことなく辿り着けますが、私たちは途中、峠で右に行くトレッキングルートを選びました。
このトレッキングルートは本当に素晴らしい景色を堪能できます。時には地中海を見ながら、ひたすら尾根沿いを歩いて行きます。乾いた白い石灰岩、青い海、それに続くかのような青い空。これまでトレッキングに興味がなかった私ですら、感動できる光景が待っていました。海に突き出した先端から目の前の地中海へ飛び込むかのように下って行きます。港側に歩いていくと Morgiou の港が現れ、ここからは 2016年に訪れることになる Crêt de St Michel の大きな壁を見ることができました。
- Chapeau Pointu (6a) mOS
見た目以上にバランスを要求される一本でした。上部の核心部は小さなホールドはありますが、身体の置き方で難しさが変わるタイプで、カランクらしい「素直でない6a」だったと思います。
楽しかったあとは、ご想像の通り、来たアプローチの登り返しが待っています。帰りは歩きやすい舗装路を使いましたが、クライミング後の体には駐車場までが遠く感じました。Les Calanques でクライミングをする際は、計画を立てる時に駐車場が閉鎖される期間を確認することをお勧めします。
どうにかこうにか最後の力を振り絞って駐車場にたどり着きました。近くのイタリアンレストランで晩御飯を食べる予定でしたが、なんとカードが使えないとのことで断念。こんな観光地でもカードが使えないお店があるんですね。それでもラッキーなことに、住宅地でテイクアウトのピザ屋を見つけ、公園で食事をすることになりました。テイクアウト専門のお店でしたが、石窯で焼いた本格ピザで美味しかったです。星空の下、焼きたてのピザを分け合いながら、その日のムーブや景色を振り返りながらのクライミング談義。レストランよりも、むしろこの公園でピザを食べたからこそ、その後もはっきりと記憶に残ったんだと思います。こんなピザ屋さんがストラスブールにもあればいいのに。
5月9日 曇り後小雨 Sormiou 粘って掴んだ RP
この日は Sormiou へ。昨日と同じ駐車場から右のトレッキングルートを進みました。歩きやすいルートで、海岸に行く前にもいくつもクライミングエリアがありました。
Lou Spigaou
- Boumchanka (5c) FL
コーナーの使い方が鍵。一見シンプルですが、足の置き方で難易度が変わるルートでした。意外と登りにくかったです。 - Pec Pec Est Tombé du Bec (6c) RP
この日最大の目標。
1便目は3ボルト目で敗退。「これは無理かもしれない」と思うほどムーブが見えませんでした。
2便目でようやく核心の動きがつかめました。ムーブが分かれば6cというグレードに納得はできたものの、まだ完登できる確信は持てませんでした。
3便目。途中から雨が降り始めます。それでもムーブは体に入っていたので、核心を越えた瞬間、ようやく「登れる!」という感覚が湧き起こってきました。何度も考え直し、失敗を重ねて掴んだ一本だったので、この遠征の中でも特に記憶に残るルートになりました。 - La Prima (4c) FL
ギア類の回収便としてトライ。
5月10日 晴れ&ミストラル Sormiou 風に支配される岩場
Sormiou へ行くための本来の駐車場から歩いて5分で行ける、Colline de Lne へ行きました。海は見えませんが、岩の配置や光の入り方が独特で、惑星に降り立ったような写真映えするエリアだと思います(実際にはカメラが壊れて撮れませんでしたが……)。ただこの日は状況が違っていました。ミストラルがとにかく強烈に吹き荒れていたのです。
Colline de Lne ― Compet
- Les Minimes Friment (4c) FL
何このルート?見た目以上に動きが細かい。風もあり、簡単なルートのはずが集中力を持っていかれました。隣のルートに入らず直登するのが本来のラインだと思います。でも5b ぐらいに感じました。 - Les Benjamins S'eclatent (5c) mOS
このルートも難しいです。上部核心部はコーナーで、かつボルトが遠いので結構焦りました。6a+ ぐらいの気持ちでトライする方が良いかもしれません。 - Y A Trop de Prises (6a+) TO
垂壁のカチ系ルート。リードでトライしましたが、ボルトの間隔が遠く、ミストラルの強風に根負けしてテンション。強風の鷲頭山でクライミングをしたことを思い出しました。
5月11日 晴れ&ミストラル Sormiou 最終日、カランクの締めくくりは焼き魚
今日がクライミング最終日です。夕方までクライミングして、夕食後に Nancy へ向けて出発予定です。クライミングエリアは昨日と同じ Sormiou・Colline de Lne へ行きました。昨日同様に風が強く、吹き飛ばされそうになりながらのクライミングとなりました。
Colline de Lne ― Face Sud
- Scarface (6b) mOS
意外と登りやすかったです。落ち着いてホールドを探すのがポイントです。 - La Nuit du Chasseur (6b) FL
ワンポイントなルートだと思います。核心のトラバースで上手くバランスが保てるかがポイントです。 - Assurance Sur La Mort (7a) TR
見たところ下部はパワーが必要で、上部はボルト間隔の遠さが印象的なルート。間隔が4m以上離れている箇所もあり、びびって TR で登りました。見た通りのルートでした。ホールドが分かれば問題ないと思いますが、上部はボルトの間隔が鬼のように遠いので慎重に。
これにてクライミングは終了。夕食は港町のレストランへ。名物のブイヤベース(bouillabaisse)を注文するも3時間かかると言われて断念。代わりに焼き魚の盛り合わせを食べましたが、正直に言えば期待ほどではなかったです 😞 それでも、地中海の魚をこれだけまとめて食べる機会は珍しく、それ自体が旅の記憶になりました。
夜22時過ぎ、カランクを出発し、Lyon で1時間ほど迷子になって、Nancy には翌朝7時に到着。Nancy 駅で1時間ほど電車を待ってから、ストラスブールには10時頃に帰ってきました。ストラスブールに戻って最初に思ったことは、「寒い……。」でした。南仏の太陽との落差に驚きながら、この旅が終わりました。
カランクという土地に惹かれて
満室のキャンプ場、迷い続けたアプローチという名のトレッキング、強風のミストラル、そして思い通りに登れないクライミングルート。この遠征は決して順調な8日間ではありませんでしたが、振り返れば、それぞれのエピソードが今でも鮮明に思い出せます。それでも、最も強く記憶に残っているのは成功でも失敗でもなく、風景でした。
白い石灰岩と青い地中海。そして、その風景の中に点在する一本一本のルート。カランクでのクライミングは、ルートの本数やグレードだけでは語れない場所でした。岩場へ向かう長いアプローチも、尾根から見下ろす地中海も、夕暮れの港町で食べたピザも、すべてが旅の一部でした。登るために訪れたはずなのに、気が付けば南フランスという土地そのものが好きになっていた。そんなクライミングエリアは、私にとってカランクが初めてだったかもしれません。
現地で役立ったメモ
キャンプサイト(Camping Caravaning ☆☆ Les Cigales)
シャワーは温水も出ますが、混み合う時間帯によっては水のように冷たかったです。電源があるので携帯電話の電池が切れても充電はできそうでした。トイレは便座なし。紙もないので、各自で持参する必要がありました。
お店
スーパーはキャンプサイトから歩いて10分ぐらいのところにあります。パン屋さんはキャンプサイトから歩いて5分ぐらいのところに。キャンプサイトにも売店があり、冷えたビールが販売されていました。意外にもカードで支払いができないお店が結構ありました。
トポ・クライミング道具など
トポは Marseille の DECATHLON で買うことができます。しかしこのお店ではクライミング道具をほとんど扱っていないので、クライミング道具を探す場合は Au Vieux Campeur まで行くことをお勧めします。
⚠️ 補足:カメラ(コンデジ)が壊れてしまい、写真が撮れなかったことが残念です 😭
0 件のコメント:
コメントを投稿