アヌシー近郊の La Balme de Sillingy で午前中のクライミングを終え、昼食をすませたあと、いよいよブリアンソン(Briançon)へ向けて出発です。
アヌシーからブリアンソンまでは約200km。ルートはアルプスを代表する名峠、ガリビエ峠(Col du Galibier)を越えていきます。ツール・ド・フランスを観ている人なら、一度は耳にしたことがある名前ではないでしょうか。私自身も映像では何度か見てきましたが、実際に訪れるのは今回が初めて。そして、その先に待っているブリアンソンもまた、ずっと訪れてみたかったクライミングエリアです。期待を膨らませながら、アルプスの奥へと車を走らせました。
ガリビエ峠手前の村、Les Verneys にて
峠に近づくにつれ、景色は次第にアルプスらしくなっていきます。深い谷、急峻な山肌、そして遠くに見える高峰。そんな道中、ガリビエ峠手前の小さな村、Les Verneys で思いがけない光景に出会いました。
Les Verneys はヴァロワール地方に位置する山の村で、近くに牧草地を持たないという珍しい土地柄。その特性を逆手にとった「牧草アート展」が開催されていました。
道路脇に並ぶ大きなオブジェはどれも手作り感があり、どこか温かい雰囲気。思わず車を停めて見学することにしました。中でも印象に残ったのは、世界中へ大きな衝撃を与えた新型コロナウイルス(COVID-19)を模した作品です。2020年という特別な年を象徴するような展示で、小さな子どもたちが「コロナ、コロナ!」と指を差している姿が妙に印象的でした。数年後に振り返ったとき、この光景こそが2020年の記憶として残るのかもしれません。
憧れだったガリビエ峠(Col du Galibier)を通過
標高2,642m。ツール・ド・フランスで何度も映像で見てきた、あのガリビエ峠を、自分たちの車で走っています。ツール・ド・フランスの名場面を数多く生み出してきた伝説の峠です。
この日は残念ながら曇り空で、ときおり小雨も混じっていました。それでも標高を上げるにつれて広がる景色は圧巻でした。霧に包まれた稜線。ところどころに残る雪渓。荒々しい岩峰群。晴天ではありませんでしたが、むしろアルプスらしい厳しさを感じられる景色だったように思います。「晴れていたらどれほど壮観だったか」と思いながらも、この小雨と寒さのなか、この峠を自転車で走り抜けているサイクリストたちを見て、ただただ頭が下がります。いつかは晴れた日にもう一度、この峠に立ちたいと思いました。
ついにブリアンソン(Briançon)到着
17時を過ぎた頃、ついにブリアンソンに到着しました。空は重たい雲に覆われ、いつ雨が降り出してもおかしくない空模様です。「さすがに今日は移動だけで終わりかな」と思っていたところ、クライミング仲間から「Rocher de L'Ombre に行ってみよう」の一声。まさか到着したその日に岩場へ向かうことになるとは思っていなかっただけに、疲れはありましたが、少し嬉しい誤算でした。
はじめて触れるブリアンソンの岩
向かったのは Rocher de L'Ombre。4つのセクターから構成されるエリアです。この日は駐車場から最も近い Secteur 1 - Vacherin へ。初心者向けルートが9本ほど整備されたコンパクトなエリアで、はじめてブリアンソンの岩の感触を確かめるには、ちょうどよい場所でした。
Secteur 1 - Vacherin
- Choux à la crème (6a) FL
ブリアンソンで最初に登った一本。全体的にホールドは豊富で、登りやすい印象のルートです。ただし核心は最後のセクション。最後の数手が意外に悩ましく、身長差が出やすいルートで、リーチのある人とそうでない人では、ムーブの組み立てがかなり変わってくると思います。それでも無事にフラッシュ。ブリアンソンでの最初の完登として、気持ちの良い一本になりました。
雨のブリアンソン初夜
登り終えたところで、雨が本格的に降り出してきました。慌ててロープやギアを回収し、そのまま撤収です。近くのスーパーマーケット(Géant Casino)で食料を調達しながら、雨脚が弱まるのを待ちましたが、いっこうに止む気配がありません。
「どこかに泊まれる場所を探そう」と、スマートフォンを駆使して周辺のホテルを調べましたが、良い場所は見つからず。選択肢がどんどん減っていくなか、気がつけば外は暗くなっていました。
結局、閉店していたお店の軒先を借りて夕食を取ることに。雨音を聞きながら食べる夕食は、決して快適とは言えませんでしたが、不思議と嫌な気分ではありませんでした。遠征らしいと言えば、むしろ遠征らしい夜だったのかもしれません。
23時を過ぎた頃、ようやく雨が弱まり、あらかじめ目星をつけておいたテント適地へ移動。こうして、初めてのブリアンソンでの一日が終わりました。到着早々の雨、宿探し、そして一本だけのクライミング。
決して順調なスタートではありません。それでも、「いよいよここまで来た」という高揚感の方が強く残っていました。これから始まる4日間のクライミングが、ますます楽しみになった夜でした。
活動内容(Rocher de L'Ombre / Secteur 1 - Vacherin)
- Choux à la crème (6a) FL
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