ヴェルドン渓谷 (Gorges du Verdon) での楽しかったひと時が終わり、フランス北東部のストラスブールへの帰路につく日がやってきました。
遠征初日、私たちを迎えてくれたのは強風と雷雨でした。灰色に濁ったヴェルドン川を見ながら、「本当にあの有名なエメラルドグリーンの景色が見られるのだろうか」と少し残念な気持ちになったことを覚えています。しかし帰り道、崖の上から見下ろしたその瞬間、ターコイズブルーに輝く川と湖が視界いっぱいに広がりました。
天気は快晴とは言えなかったものの、目の前に広がっていたのは、写真やガイドブックで何度も見てきたあの景色でした。深い石灰岩の峡谷。その間を流れる鮮やかなエメラルドグリーンのヴェルドン川。そして川の水をたたえるサント・クロワ湖(Lac de Sainte-Croix)。数日間この場所で登っていたにもかかわらず、最後の日になって初めて見ることができた景色です。思わず車を止めて見入ってしまいました。「やっぱり来て良かった。」そんな気持ちにさせてくれる美しさでした。「初日に見た灰色の川と、本当に同じ場所なのだろうか。」そう思ってしまうほど、目の前の景色は鮮やかでした。最初と最後でこれほど違う顔を見せてくれるとは、ヴェルドン渓谷はなかなか憎い場所です。
ヴェルドン渓谷 (Gorges du Verdon) とはどんな場所か
ヴェルドン渓谷は、フランス南東部のアルプ=ド=オート=プロヴァンス (Alpes-de-Haute-Provence) に位置する自然の名所です。プレアルプスの石灰岩の山々をヴェルドン川 (la rivière le Verdon) が長い時間をかけて浸食し、深さ最大700mに達する峡谷を形成しました。その全長は約25km。「フランスのグランドキャニオン」とも呼ばれるヨーロッパ屈指の景勝地です。
実際にその縁に立ってみると、写真で見てきた景色とはまったくスケールが違います。崖の縁から見下ろす渓谷の深さ。対岸まで続く白い石灰岩の壁。そして眼下を流れるターコイズブルーの川。どれも想像以上でした。
ヴェルドン川の特徴は、何といってもあのターコイズブルーの水色です。溶けた石灰岩の粒子が光を反射することで生まれる、他では見られない独特の色。源流は南アルプスのコル・ダロス (Col d'Allos) 付近(標高約2819m)で、全長約166kmを流れてデュランス川に合流します。
1970年代に建設されたサントクロワダム (Le barrage de Sainte-Croix) は人工のサントクロワ湖を生み出し、カヤック・カヌー・ラフティングなどのウォータースポーツの拠点にもなっています。ターコイズブルーの湖面と峡谷の断崖が作り出す景色は、見た人にしか伝わらない美しさです。
ヴェルドン渓谷が提供してくれるのはクライミングだけではありません。ハイキング、バードウォッチング、そして静かな自然の中での時間。私たちが訪れた時も、高性能な望遠レンズを備えたカメラを手にしたバードウォッチャーたちの姿が印象的でした。屋外アクティビティの宝庫であり、自然を愛するすべての人に開かれた場所だと思います。
今回実際に訪れてみて感じたのは、この場所の魅力は単なる絶景だけではないということでした。巨大な石灰岩の壁に挑戦しながら、仲間と時間を共有し、自然の中で数日間を過ごす。そんな体験そのものが、ヴェルドンの大きな魅力なのだと思います。
仲間との別れ
そしてついに、イタリア在住のOscarくんとの別れの時がやってきました。敗退あり、ヒッチハイクあり、濡れた靴下あり……と予想外の出来事が続いた数日間でしたが、だからこそ濃密な時間だったと思います。濃密な時間を共有したせいか、不思議なくらい長く一緒にいたような気がします。数日前に初めて会ったとは思えないほどでした。
別れ際、皆の目には何だか感極まったものが浮かんでいました 😢 お互いに再会を誓い合い、がっちり握手とビズをして別れました 🤗 クライミング遠征は壁を登るだけではありません。こうした出会いや別れもまた、大切な思い出のひとつです 🤗
その後、私たちもストラスブールへ向けて出発 🚗💨 約10時間のロングドライブでしたが、大きなトラブルもなく無事に到着。時計を見ると、すでに夜の20時を過ぎています。車から荷物を降ろした瞬間、ようやく遠征が終わったことを実感しました。
このメンバーと過ごした数日間
今回のメンバー(Andreaくん👱🏻♂️🇮🇹、Oscarくん👱🏻♂️🇮🇹、Louiseさん👱🏻♀️🇫🇷)とのクライミングは初めての経験でした。Andreaくんとは2018年からのクライミング仲間ですが、Louiseさんとは一度 Vosges-Kronthal で一緒に登った程度、Oscarくんとは今回が初対面。このメンバーでのマルチピッチクライミングは初めての試みでもあり、正直なところ、最初はチームワークに不安を感じていました。
La Demande での敗退からの徒歩帰還も、誰ひとり不満を口にせず、むしろ笑いながら歩き続けてくれた仲間たちのおかげで、今となっては最高の思い出になっています。計画通りに行かないことも、ヴェルドン渓谷という舞台と、この仲間たちがいたからこそ、特別な記憶になったのだと思います。
またいつか、ヴェルドンへ
今回の遠征では、憧れていたヴェルドンの壁を登り、美しい景色を見て、素晴らしい仲間たちと時間を共有することができました。もちろん課題もたくさん残っています。登れなかったルートもあります。もう一度挑戦したい壁もあります。だからこそ、この旅は「終わり」ではなく「次への始まり」なのかもしれません。皆さん、本当にお疲れ様でした。そして素晴らしい時間をありがとうございました。
またいつか、このヴェルドンの白い石灰岩の壁で再会しましょう 🤗 その時は、今回登れなかったルートの続きを登りに。そして、もう一度あのエメラルドグリーンの渓谷を見に行きたいと思います。
遠征全体の振り返りとトポ・宿・装備の情報は、次のまとめ記事でお伝えします。
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